傷寒論 原文 その2

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太陽病中篇

弁太陽病脈証并治 中

【訓読】
太陽病の脈証并びに治を弁ず 中

●第一節…第三十一章、第三十二章、第三十三章、第三十四章

第三十一章

太陽病、項背強、几几、無汗、悪風、葛根湯主之、

太陽病、項背強、几几、無汗、悪風者、葛根湯主之、

【訓読】
太陽病、項背(こうはい)強(こわ)ばること、几几(しゅしゅ)、汗(あせ)無く、悪風(おふう)する者は、葛根湯之を主る。

第三十二章

太陽与陽明合病者、必自下利、葛根湯主之、

【訓読】
太陽と陽明の合病(ごうびょう)の者は、必ず自下利(じげり)す。葛根湯之を主る。

葛根湯方
葛根四両 麻黄三両 桂枝
(※)二両 芍薬二両 甘草二両 生薑三両 大棗十二枚
右七味、〓咀、以水一斗、先煮麻黄葛根、減二升、去滓、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗、不須啜粥、余如桂枝法、将息及禁忌、

【訓読】
葛根湯の方
葛根四両 麻黄三両 桂枝二両 芍薬二両 甘草二両 生薑三両 大棗十二枚
右七味(しちみ)、〓咀(ふそ)し、水一斗を以て、先づ麻黄葛根を煮て、二升を減じ、滓(かす)を去り、諸薬を内(い)れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆ふて微似汗(びじかん)を取る。粥(かゆ)を啜(すす)るを須ひず。余は桂枝の法の如く、将息(しょうそく)及び禁忌す。

第三十三章

太陽与陽明合病、不下利、但嘔者、葛根加半夏湯主之、

【訓読】
太陽と陽明との合病、下利せず、但だ嘔する者は、葛根加半夏湯之を主る。

葛根加半夏湯方
葛根四両、麻黄三両、生薑三両、甘草二両、芍薬二両、桂枝二両、大棗十二枚、半夏半斤
右八味、以水一升、先煮葛根麻黄、減一升、去白沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗、

【訓読】
葛根加半夏湯の方
葛根四両、麻黄三両、生薑三両、甘草二両、芍薬二両、桂枝二両、大棗十二枚、半夏半斤(きん)
右八味、水一升を以て、先づ葛根麻黄を煮て、一升を減じ、白沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、覆ふて微似汗を取る。

第三十四章

太陽病、桂枝証、医反下之、利遂不止、脈促者、表未解也、喘而汗出者、葛根黄連黄芩湯主之、

【訓読】
太陽病、桂枝の証、医反って之を下し、利遂(つい)に止まず、脈促(そく)なる者は、表未だ解(かい)せざるなり。喘して汗出づる者は、葛根黄連黄芩湯之を主る。

葛根黄連黄芩湯方
葛根半斤 甘草二両 黄芩二両 黄連三両
右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸薬、煮取二升、去滓、分温再服、

【訓読】
葛根黄連黄芩湯の方
葛根半斤 甘草二両 黄芩二両 黄連三両
右四味、水八升を以て、先づ葛根を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分ち温め再服す。

●第二節…第三十五章、第三十六章、第三十七章

第三十五章

太陽病、頭痛、発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風、無汗而喘者、麻黄湯主之、

【訓読】
太陽病、頭痛発熱し、身疼(しんとう)、腰痛し、骨節疼痛し、悪風し、汗無くして喘する者は、麻黄湯之を主る。

麻黄湯方
麻黄三両 桂枝二両 甘草一両 杏仁七十個
右四味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸薬、煮取三升半、去滓、温服八合、覆取微似汗、不須粥啜、余如桂枝法将息、

【訓読】
麻黄湯の方
麻黄三両 桂枝二両 甘草一両 杏仁七十個
右四味、水九升を以て、先づ麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升半を取り、滓を去り、八合を温服す。覆ふて微似汗を取る。粥を啜るを須ひず。余は桂枝の法の如く将息す。

第三十六章

太陽与陽明合病、喘而胸満者、不可下、宜麻黄湯主之、

【訓読】
太陽と陽明との合病、喘して胸満する者は、下すべからず。麻黄湯に宜し、之を主る。

第三十七章

太陽病、十日以去、脈浮細而嗜臥者、外已解也、設胸満脇痛者、与小柴胡湯、脈但浮者、与麻黄湯、

【訓読】
太陽病、十日以去、脈浮細にして臥(が)を嗜む者は、外已に解せるなり。設し胸満脇痛する者は、小柴胡湯を与ふ。脈但浮なる者は、麻黄湯を与ふ。

●第三節…第三十八章、第三十九章

第三十八章

太陽中風、脈浮緊、発熱、悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之、若脈微弱、汗出、悪風者、不可服、服之、則厥逆、筋タ、肉瞤、此為逆、

【訓読】
太陽の中風、脈浮緊に、発熱悪寒し身疼痛(しんとうつう)す、汗出でずして煩躁(はんそう)する者は、大青龍湯之を主る。若し脈微弱に、汗出で悪風する者は、服すべからず。之を服すれば則ち厥逆し、筋タ肉瞤(きんてきにくじゅん)す。之を逆と為すなり。

大青龍湯方
麻黄六両 桂枝二両 甘草二両 杏仁四十枚 生薑三両 大棗十枚 石膏如鶏子大
右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、取微似汗、一服汗者、停後服、

【訓読】
大青龍湯の方
麻黄六両 桂枝二両 甘草二両 杏仁四十個 生薑三両 大棗十枚 石膏鶏子大
右七味、水九升を以て、先づ麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。微似汗を取る。一服にて汗する者は、後服を停む。

第三十九章

傷寒、脈浮緩、身不疼、但重、乍有軽時、無少陰証者、大青龍湯主之、

【訓読】
傷寒、脈浮緩に、身(み)疼まず、但重く、乍(たちま)ち軽き時有り、少陰の証無き者は、大青龍湯にて之を発す。

●第四節…第四十章、第四十一章

第四十章

傷寒〔表不解〕、心下有水気、乾嘔、発熱而欬、或渇、或利、或噎、或小便不利、小腹満、或喘者、小青龍湯主之、

傷寒表未解、心下有水気、乾嘔、発熱而欬、或渇、或利、或噎、或小便不利、小腹満、或喘者、小青龍湯主之、

【訓読】
傷寒表未だ解せず、心下に水気有り、乾嘔し発熱して欬(がい)し、或は渇し、或は利し、或は噎(えっ)し、或は小便利せず、小腹満ち、或は喘する者は、小青龍湯之を主る。

小青龍湯方
麻黄三両 芍薬三両 細辛三両 乾薑三両 甘三両草 桂枝三両 五味子半升 半夏半升洗、
右八味、以水一斗、先煮麻黄減二升、去上沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、

【訓読】
小青龍湯の方
麻黄三両去節 芍薬三両 五味子半升 乾薑三両 甘草三両炙 桂枝三両去皮 半夏半升洗 細辛三両
右八味、水一斗を以て、先づ麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。

第四十一章

傷寒心下有水気、欬而微喘、発熱、不渇、服湯已、渇者、此寒去欲解也、小青龍湯主之、

【訓読】
傷寒心下に水気有り、欬して微喘し、発熱し渇せず、湯を服し已(おわ)って渇する者、此れ寒去り解せんと欲するなり。小青龍湯之を主る。

●第五節…第四十二章、第四十三章、第四十四章

第四十二章

太陽病、外証未解、脈浮弱者、当以汗解、宜桂枝湯、

【訓読】
太陽病、外証未だ解せず、脈浮弱なる者は、当に汗を以て解すべし、桂枝湯に宜し。

第四十三章

太陽病、下之、微喘者、表未解故也、桂枝加厚朴杏仁湯主之、

【訓読】
太陽病、之を下し、微喘する者は、表未だ解せざるが故なり。桂枝加厚朴杏仁湯之を主る。

 

桂枝加厚朴杏仁湯方
於桂枝湯方内、加厚朴二両杏仁五十個、余依前法、

【訓読】
桂枝加厚朴杏仁湯の方
桂枝湯方内に於て、厚朴二両杏仁五十個を加ふ。余は前法に依る。

第四十四章

太陽病、外証未解者、不可下也、下之為逆、欲解外者、宜桂枝湯、主之、

【訓読】
太陽病、外証未だ解せざる者は、下すべからざるなり、之を下すを逆と為す。外を解せんと欲するには、桂枝湯に宜し、之を主る。

以下の章、第四十四章の註文に似たり。…『傷寒論講義』

第四十五章

太陽病、先発汗不解、而復下之、脈浮者不愈、浮為在外、而反下之、故令不愈、今脈浮、故知在外、当須解外則愈、宜桂枝湯主之、

●第六節…第四十六章、第四十七章、第四十八章、第五十五章

第四十六章

太陽病、脈浮緊、無汗、発熱、身疼痛、八九日不解、表証仍在、此当発其汗、服薬已、微除、其人発煩、目瞑、劇者必衄、衄乃解、〔所以然者、陽気重故也〕、麻黄湯主之、

太陽病、脈浮緊、無汗、発熱、身疼痛、八九日不解、表証仍在、此当発其汗、服薬已、微除、其人発煩、目瞑、劇者必衄、衄乃解、麻黄湯主之、

【訓読】
太陽病、脈浮緊に汗無く発熱(ほつねつ)し身疼痛(しんとうつう)し、八九日(はっくじつ)解せず、表証仍ほ在り、此れ当に其の汗を発すべし。薬を服し已って、微しく除き、其人発煩(はっぱん)、目瞑(もくめい)し、劇しき者は必ず衄(じく)す。衄すれば乃ち解す。麻黄湯之を主る。

第四十七章

太陽病、脈浮緊、発熱、身無汗、自衄者愈、

【訓読】
太陽病、脈浮緊に発熱し身に汗無く、自(おの)づから衄する者は愈ゆ。

第四十八章

二陽併病、太陽初得病時、発其汗、汗先出不徹、因転属陽明、続自微汗出、不悪寒。若太陽証不罷者、不可下、下之為逆、如此可小発汗、〔設面色縁縁正赤者、陽気怫鬱在表、当解之熏之、若発汗不徹、不足言、陽気怫鬱不得越、当汗不汗、其人躁煩、不知痛処、乍在腹中、乍在四肢、按之不可得、其人短気但坐、以汗出不徹故也、更発汗則愈、何以知汗出不徹、以脈〓故知也〕、

二陽併病、太陽初得病時、発其汗、汗先出不徹、因転属陽明、続自微汗出、不悪寒、若太陽証不罷者、不可下、下之為逆、如此可小発汗、

【訓読】
二陽の併病(へいびょう)、太陽初め病を得(う)るの時、其の汗を発し、汗出でて徹せず、因て陽明に転属す。続いて自づから微汗出で、悪寒せず。若し太陽病罷(や)まざる者は、下すべからず。之を下すを逆と為す。此(かく)の如きは小しく汗を発すべし。

以下の六章(第四十九章、第五十章、第五十一章、第五十二章、第五十三章、第五十四章)は、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第四十九章

脈浮数者、法当汗出而愈、若下之、身重、心悸者、不可発汗、当自汗出乃解、所以然者、尺中脈微、此裏虚。須表裏実、津液自和、便自汗出愈、

第五十章

脈浮緊者、法当身疼痛、宜以汗解之、仮令尺中遅者、不可発汗、何以知然、以栄気不足、血少故也、

第五十一章

脈浮者、病在表、可発汗、宜麻黄湯、

第五十二章

脈浮而数者、可発汗、宜麻黄湯、

第五十三章

病常自汗出者、此為栄気和、栄気和者、外不諧、以衛気不共栄気諧和故爾、以栄行脈中、衛行脈外。復発其汗、栄衛和則愈、宜桂枝湯、

第五十四章

病人蔵無他病、時発熱、自汗出、而不愈者、此衛気不和也、先其時発汗則愈宜桂枝湯、

 

第五十五章

傷寒、脈浮緊、不発汗、因致衄者、麻黄湯主之、

【訓読】
傷寒、脈浮緊に、発汗せず、因て衄を致す者は、麻黄湯之を主る。

●第七節…第五十六章、第五十七章

第五十六章

傷寒、不大便六七日、頭痛、有熱者、与承気湯、其小便清者、知不在裏、仍在表也、当須発汗、若頭痛者必衄、宜桂枝湯、

【訓読】
傷寒、大便せざること六七日(ろくしちじつ)、頭痛し熱有る者は、承気湯を与ふ。其の小便清(す)める者は、知る裏に在らずして仍ほ表に在ることを、当に須(すべか)らく汗を発すべし。若し頭痛する者は必ず衄す。桂枝湯に宜し。

第五十七章

傷寒、発汗解、半日許復煩、脈浮数者、可更発汗、宜桂枝湯、主之、

【訓読】
傷寒、発汗して解し、半日許(はんじつばか)りにして復(ま)た煩し、脈浮数なる者は、更に発汗すべし。桂枝湯に宜し、之を主る。

●第八節…第五十八章、第五十九章、第六十章、第六十一章、第六十二章、第六十三章、第六十四章、第六十五章、第六十六章

第五十八章

凡病、若発汗、若吐、若下、若亡津液、陰陽自和者、必自愈、

【訓読】
凡そ病、若しくは発汗し、若しくは吐し、若しくは下し、若し津液を亡ふも、陰陽自づから和する者は、必ず自づから愈ゆ。

第五十九章

大下之後、復発汗、小便不利者、亡津液故也、勿治之、得小便利、必自愈、

【訓読】
大いに之を下して後、復た発汗し、小便利せざる者は、津液を亡ふが故なり。之を治すること勿れ、小便利するを得(う)れば、必ず自づから愈ゆ。

第六十章

下之後、復発汗、必振寒、脈微細、〔所以然者〕、以内外倶虚故也、

下之後、復発汗、必振寒、脈微細、以内外倶虚故也、

【訓読】
之を下して後、復た発汗し、必ず振寒し、脈微細なるは、内外倶に虚するを以ての故なり。

第六十一章

下之後、復発汗、昼日煩躁不得眠、夜而安静、不嘔不渇、無表証、脈沈微、身無大熱者、乾薑附子湯主之、

【訓読】
之を下して後、復た発汗し、昼日は煩躁して、眠ることを得ず、夜は而(すな)わち安静、嘔せず渇せず、表証無く、脈沈微に、身に大熱(だいねつ)無き者は、乾薑附子湯之を主る。

第六十二章

発汗後、身疼痛、脈沈遅者、桂枝加芍薬生薑各一両人参三両新加湯主之、

【訓読】
発汗の後、身疼痛(しんとうつう)し、脈沈遅の者は、桂枝加芍薬生薑各一両人参三両新加湯之を主る。

第六十三章

発汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者、可与麻黄杏仁甘草石膏湯主之、

【訓読】
発汗の後は、更に桂枝湯を行なふべからず。汗出でて喘し、大熱(だいねつ)無き者は、麻黄杏仁甘草石膏湯を与ふべし、之を主る。

麻黄杏仁甘草石膏湯方
麻黄四両 杏仁五十個 甘草二両 石膏半斤、
右四味、以水七升、煮麻黄、減二升、去上沫、内諸薬、煮取二升、去滓、温服一升、

【訓読】
麻黄杏仁甘草石膏湯の方
麻黄四両 杏仁五十個 甘草二両 石膏半斤
右四味、水七升を以て、先づ麻黄を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。

第六十四章

発汗過多、其人叉手自冒心、心下悸、欲得按者、桂枝甘草湯主之、

【訓読】
発汗過多、其の人叉手(さしゅ)して自(みず)から心を冒い、心下悸し、按ずることを得んと欲する者は、桂枝甘草湯之を主る。

桂枝甘草湯方
桂枝四両 甘草二両
右二味、以水三升、煮取一升、去滓、頓服、

【訓読】
桂枝甘草湯の方
桂枝四両 甘草三両
右二味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、頓服す。

第六十五章

発汗後、其人臍下悸、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之、

【訓読】
発汗の後、其の人臍下悸(せいかき)する者は、奔豚(ほんとん)とならんと欲す、茯苓桂枝甘草大棗湯之を主る。

茯苓桂枝甘草大棗湯方
茯苓半斤 桂枝四両 甘草二両 大棗十五枚
右四味、以甘爛水一斗、先煮茯苓、減二升、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、日三服、作甘爛水法、取水二斗、置大盆内、以杓揚之、水上有珠子五六千顆相逐、取用之、

【訓読】
茯苓桂枝甘草大棗湯の方
茯苓半斤 甘草三両 大棗十二枚 桂枝四両
右四味、甘爛水(かんらんすい)一斗を以て、先づ茯苓を煮て、二升を減じ、一升を温服す。日に三服す。甘爛水を作るの法は、水二斗を取り、大盆内に置き、杓を以て之を揚げ、水上に珠子五六千顆相逐ふ有り、取りて之を用ふ。

第六十六章

発汗後、腹脹満者、厚朴生薑甘草半夏人参湯主之、

【訓読】
発汗の後、腹脹満(ふくちょうまん)する者は、厚朴生薑甘草半夏人参湯之を主る。

厚朴生薑半夏甘草人参湯方
厚朴半斤 生薑半斤 半夏半斤 甘草二両 人参一両
右五味、以水一斗、煮取三升、去滓温服一升、日三服、

【訓読】
厚朴生薑甘草半夏人参湯の方
厚朴半斤 生薑半斤 半夏半升 甘草二両 人参一両
右五味、水一斗を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。

●第九節…第六十七章、第六十八章、第六十九章、第七十章

第六十七章

傷寒、若吐、若下後、心下逆満、気上衝胸、起則頭眩、脈沈緊、発汗則動経、身為振振揺者、茯苓桂枝白朮甘草湯主之、

【訓読】
傷寒、若しくは吐し若しくは下して後、心下逆満(しんかぎゃくまん)し、起てば則ち頭眩す。脈沈緊、汗を発すれば則ち経を動かし、身(み)振振として揺(うご)かさるる者は、茯苓桂枝白朮甘草湯之を主る。

茯苓桂枝白朮甘草湯方
茯苓四両 桂枝三両 白朮二両 甘草二両
右四味、以水六升、煮取三升、去滓、分温三服、

【訓読】
茯苓桂枝白朮甘草湯の方
茯苓四両 桂枝三両 白朮二両 甘草二両
右四味、水六升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、分ち温め三服す。

第六十八章

発汗、病不解、反悪寒者、虚故也、芍薬甘草附子湯主之、

【訓読】
発汗して病解(かい)せず、反って悪寒する者は、虚するが故なり。芍薬甘草附子湯之を主る。

 

芍薬甘草附子湯方
芍薬三両 甘草三両 附子一枚
右三味、以水五升、煮取一升五合、去滓、分温三服、

【訓読】
芍薬甘草附子湯の方
芍薬三両 甘草三両 附子一枚
右三味、水五升を以て、煮て一升五合を取り、滓を去り、分ち温め服す。

第六十九章

発汗、若下之、病仍不解、煩躁者、茯苓四逆湯主之、

【訓読】
発汗し若しくは之を下し、病仍ほ解せず、煩躁する者は、茯苓四逆湯之を主る。

茯苓四逆湯方
茯苓四両 人参一両 甘草二両 乾薑一両半 附子一枚
右五味、以水五升、煮取三升、去滓、温服七合、日三服、

【訓読】
茯苓四逆湯の方
茯苓六両 人参一両 甘草二両 乾薑一両半 附子一枚
右五味、水五升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、七合を温服す。日に三服。

第七十章

発汗後、悪寒者、虚故也、不悪寒、但熱者、実也、当和胃気、与調胃承気湯、

【訓読】
発汗後、悪寒する者は虚するが故なり。悪寒せず但熱する者は実なり。当に胃気を和すべし。調胃承気湯を与ふ。

●第十節…第七十一章、第七十二章、第七十三章、第七十四章

第七十一章

太陽病、〔発汗後、大汗出〕、胃中乾、煩躁、不得眠、欲得飲水者、少少与飲之、令胃気和則愈、若脈浮、小便不利、微熱、消渇者、五苓散主之、

太陽病、発汗、大汗出後、胃中乾、煩躁、不得眠、欲得飲水者、少少与飲之、令胃気和則愈、若脈浮、小便不利、微熱、消渇者、五苓散主之、

【訓読】
太陽病、発汗、大汗(たいかん)出でて後、胃中乾き煩躁して眠ることを得ず、水を飲まんことを得んと欲する者は、少少与へて之を飲ましめ、胃気を和せしむれば則ち愈ゆ。若し脈浮に、小便利せず、微熱し消渇(しょうかつ)する者は、五苓散之を主る。

五苓散方
猪苓十八銖 沢瀉一両六銖 白朮十八銖 茯苓十八銖 桂半両
右五味、為末、以白飲和、服方寸匕、日三服、多飲煖水、汗出愈、如法将息、

【訓読】
五苓散の方
猪苓十八銖 沢瀉一両六銖半 茯苓十八銖 桂半両 白朮十八銖
右五味、末と為し、白飲を以て和し、方寸匕(ほうすんぴ)を服す。日に三服。多く煖水を飲む。汗出で愈ゆ。

第七十二章

発汗已、脈浮数、煩渇者、五苓散主之、

【訓読】
発汗し已って、脈浮数に、煩渇する者は、五苓散之を主る。

第七十三章

傷寒、汗出而渇者、五苓散主之、不渇者、茯苓甘草湯主之、

【訓読】
傷寒、汗出でて渇する者は、五苓散之を主る。渇せざる者は、茯苓甘草湯之を主る。

茯苓甘草湯方
茯苓二両 桂枝二両 甘草一両 生姜三両
右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服、

【訓読】
茯苓甘草湯の方
茯苓二両 桂枝二両 生薑三両 甘草一両
右四味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分り温め三服す。

第七十四章

中風、発熱、六七日不解、而煩、有表裏証、渇欲飲水、水入則吐者、名曰水逆、五苓散主之、

【訓読】
中風、発熱し、六七日解せずして煩し、表裏の証有り、渇して水を飲まんと欲し、水入れば則ち吐する者は、名づけて水逆(すいぎゃく)と曰ふ、五苓散之を主る。

以下の三章は、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第七十五章

未持脈時、病人手叉自冒心、師因教試令欬、而不欬者、此必両耳聾、無聞也、所以然者、以重発汗、虚故如此、

第七十六章

発汗後、飲水多、必喘、以水潅之、亦喘、

第七十七章

発汗後、水薬不得入口為逆、若更発汗、必吐下不止、

●第十一節…第七十八章、第七十九章、第八十章、第八十一章、第八十二章、第八十三章

第七十八章

発汗吐下後、虚煩不得眠、若劇者、必反覆顚倒、心中懊憹、梔子豉湯主之、

【訓読】
発汗吐下の後、虚煩して眠ることを得ず。若し劇しき者は、必ず反覆顚倒し、心中懊憹(おうのう)す、梔子豉湯之を主る。

梔子豉湯方
梔子十四枚 香豉四合
右二味、以水四升、先煮梔子、得二升半、内豉、煮取一升半、去滓、分温二服、温進一服、得吐者、止後服、

【訓読】
梔子豉湯の方
梔子十四枚 香豉四合
右二味、水四升を以て、先づ梔子を煮て、二升半を得、豉を内れ、煮て一升半を取り、滓を去り、分ち温め二服となし、一服を温進す。吐を得る者は、後服を止む。

第七十九章

若少気者、梔子甘草豉湯主之、若嘔者、梔子生薑豉湯主之、

【訓読】
若し少気する者は梔子甘草豉湯之を主る。若し嘔する者は、梔子生薑豉湯之を主る。

梔子甘草豉湯方
梔子豉湯方内、加入甘草二両、余依前法、得吐者止後服、

【訓読】
梔子甘草豉湯の方
梔子豉湯方内に甘草二両を加入す。余は前法に依る。吐を得れば後服を止む。

梔子生薑豉湯方
梔子豉湯方内、加生薑五両、余依前法、得吐者止後服、

【訓読】
梔子生薑豉湯の方
梔子豉湯方内に、生薑五両を加ふ。余は前法に依る。吐を得れば後服を止む。

第八十章

発汗、若下之、而煩熱、胸中窒者、梔子豉湯主之、

【訓読】
発汗し若しくは之を下して、煩熱し胸中窒(ふさ)がる者は、梔子豉湯之を主る。

第八十一章

傷寒、五六日、大下之後、身熱不去、心中結痛者、未欲解也、梔子豉湯主之、

【訓読】
傷寒五六日、大いに之を下して後、身熱(しんねつ)去らず、心中結痛(けっつう)する者は、未だ解せんと欲せざるなり、梔子豉湯之を主る。

第八十二章

傷寒 、下後、心煩、腹満、臥起不安者、梔子厚朴湯主之、

【訓読】
傷寒、下して後、心煩し、腹満し、臥起安からざる者は、梔子厚朴湯之を主る。

梔子厚朴湯方
梔子十四枚 厚朴四両 枳実四枚
已上三味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分三服、温進一服、得吐者、止後服、

【訓読】
梔子厚朴湯の方
梔子十四枚 厚朴四両 枳実四枚、
已上三味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、三服に分ち、一服を温進す。吐を得る者は後服を止む。

第八十三章

傷寒、医以丸薬大下之、身熱不去、微煩者、梔子乾薑湯主之、

【訓読】
傷寒、医丸薬を以て大いに之を下し、身熱去らず、微煩する者は、梔子乾薑湯之を主る。

梔子乾薑湯方
梔子十四枚 乾薑二両
右二味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服、温進一服、得吐者、止後服、

【訓読】
梔子乾薑湯の方
梔子十四枚 乾薑二両
右二味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分ち、一服を温進す。吐を得る者は、後服を止む。

以下の章、疑ふらくは旧章に非らん。…『傷寒論講義』

第八十四章

凡用梔子湯、病人旧微溏者、不可与服之、

●第十二節…第八十五章、第九十四章、第九十五章

第八十五章

太陽病、発汗、汗出不解、其人仍発熱、心下悸、頭眩、身瞤動、振振欲僻地者、真武湯主之、

【訓読】
太陽病、発汗し汗出でて解せず、其の人仍ほ発熱し、心下悸し頭眩し、身瞤動(じゅんどう)し、振振として地に僻(た)ふれんと欲する者は、真武湯之を主る。

以下の八章は、疑ふらくは旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第八十六章

咽喉乾燥者、不可発汗、

第八十七章

淋家、不可発汗、発汗必便血、

第八十八章

瘡家、雖身疼痛、不可発汗、汗出則痙、

第八十九章

衄家、不可発汗、汗出必額上陥、脈急緊、直視、不能眴、不得眠、

第九十章

亡血家、不可発汗、発汗、則寒慄而振、

第九十一章

汗家、重発汗、必恍惚心乱、小便已陰疼、与禹余糧丸、闕、

第九十二章

病人有寒、復発汗、胃中冷、必吐〓、

第九十三章

本発汗、而復下之、此為逆也、若先発汗、治不為逆、本先下之、而反汗之為逆、若先下之、治不為逆、

 

第九十四章

傷寒、医下之、続得下利、清穀不止、身疼痛者、急当救裏、後身疼痛、清便自調者、急当救表、救裏、宜四逆湯、救表、宜桂枝湯、

【訓読】
傷寒、医之を下し、続いて下利を得、清穀(せいこく)止まず、身疼痛(しんとうつう)する者、急に当に裏を救ふべし。後身疼痛し清便(せいべん)自調する者は、急に当に表を救ふべし。裏を救ふには四逆湯に宜しく表を救ふには桂枝湯に宜し。

第九十五章

病、発熱、頭痛、脈反沈、若不差、身体疼痛、当救其裏、宜四逆湯、

【訓読】
病、発熱、頭痛し、脈反って沈に、若し差えず、身体疼痛するは、当に其の裏を救ふべし、四逆湯に宜し。

以下の三章は疑ふらくは、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第九十六章

太陽病、先下之、而不愈、因復発汗、以此表裏倶虚、其人因致冒、冒家、汗出自愈、所以然者、汗出表和故也。得表和、然後復下之、

第九十七章

太陽病、未解、陰陽脈倶停、必先振慄、汗出而解、但陽脈微者、先汗出而解、但陰脈微者、下之而解、若欲下之、宜調胃承気湯主之、

第九十八章

太陽病、発熱、汗出者、此為栄弱衛強、故使汗出。欲救邪風者、宜桂枝湯、

●第十三節…第九十九章、第百三章、第百四章、第百七章

第九十九章

傷寒、五六日、中風、往来寒熱、胸脇苦満、黙黙不欲飲食、心煩、喜嘔、或胸中煩而不嘔、或渇、或腹中痛、或脇下痞鞕、或心下悸、小便不利、或不渇、身有微熱、或欬者、〔与〕小柴胡湯主之、

傷寒、五六日、中風、往来寒熱、胸脇苦満、黙黙不欲飲食、心煩、喜嘔、或胸中煩而不嘔、或渇、或腹中痛、或脇下痞鞕、或心下悸、小便不利、或不渇、身有微熱、或欬者、小柴胡湯主之、

【訓読】
傷寒五六日中風、往来寒熱し、胸脇苦満し、黙黙として飲食を欲せず、心煩し、喜嘔す。或は胸中煩して嘔せず、或は渇し、或は腹中痛み、或は脇下痞鞕し、或は心下悸し小便利せず、或は渇せず身に微熱有り、或は欬する者は、小柴胡湯之を主る。

小柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三両 人参三両 甘草三両 半夏半升 生薑三両 大棗十二枚
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎、取三升、温服一升、日三服、

【訓読】
小柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三両 人参三両 甘草三両 半夏半升 生薑三両 大棗十二枚
右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎し、三升を取り、一升を温服す。日に三服す。

以下の三章(第百章、第百一章、第百二章)は、恐らくは後人の一家言ならん。…『傷寒論講義』

第百章

血弱、気尽、腠理開、邪気因入、与正気相搏、結於脇下、正邪分争、往来寒熱、休作有時、黙黙不欲飲食、蔵府相連、其痛必下、邪高痛下、故使嘔也、小柴胡湯主之、

第百一章

服柴胡湯已、渇者、属陽明也、以法治之、

第百二章

得病六七日、脈遅浮弱、悪風寒、手足温、医二三下之、不能食、而脇下満痛、面目及身黄、頚項強、小便難者、与柴胡湯、後必下重、本渇、而飲水嘔者、柴胡湯不中与也、食穀者噦、

第百三章

傷寒、四五日、身熱、悪風、頸項強、脇下満、手足温而渇者、小柴胡湯主之、

【訓読】
傷寒四五日、身熱悪風し、頸項強ばり、脇下満ち、手足温にして渇する者は、小柴胡湯之を主る。

第百四章

傷寒、陽脈渋、陰脈弦、〔法当〕腹中急痛者、先与小建中湯、不差者〔与〕小柴胡湯主之、

傷寒、陽脈渋、陰脈弦、腹中急痛者、先与小建中湯、不差者小柴胡湯主之、

【訓読】
傷寒、陽は脈渋、陰は脈弦、腹中急痛すべきする者は、先づ小建中湯を与ふ。差えざる者は、小柴胡湯之を主る。

小建中湯方
桂枝三両 甘草二両 大棗十二枚 芍薬六両 生薑三両 膠飴一升
右六味、以水七升、煮取三升、去滓、内膠飴、更上微火、消解、温服一升、日三服、嘔家不可用建中湯、以甜故也、

【訓読】
小建中湯方
桂枝三両 甘草二両 大棗十二枚 芍薬六両 生薑三両 膠飴一升
右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、膠飴を内れ、更に微火に上せ、消解し、一升を温服す。日に三服す。嘔家は建中湯を用ふるべからず、甜きを以ての故なり。

 

以下の二章(第百五章、第百六章)は疑ふらくは、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第百五章

傷寒、中風、有柴胡証、但見一証便是、不必悉具、

第百六章

凡柴胡湯病証、而下之、若柴胡証不罷者、復与柴胡湯、必蒸蒸而振、却発熱汗出而解、

第百七章

傷寒、二三日、心中悸而煩者、小建中湯主之、

【訓読】
傷寒、二三日、心中悸して煩する者は、小建中湯之を主る。

●第十四節…第百八章、第百九章、第百十章

第百八章

太陽病、過経十余日、反二三下之、後四五日、柴胡証仍在者、先与小柴胡湯、嘔不止、心下急、鬱鬱微煩者、為未解也、与大柴胡湯、下之則愈、

【訓読】
太陽病、過経十余日、反って二三之を下し、後四五日、柴胡証仍ほ在る者は、先づ小柴胡湯を与ふ。嘔止まず、心下急、鬱鬱として微煩する者、未だ解せずと為すなり。大柴胡湯を与へて之を下せば、則ち愈ゆ。

大柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三両 芍薬二両 半夏半斤 生薑五両 枳実四枚 大棗十二枚
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎、温服一升、日三服、一方用大黄二両、若不加大黄、恐不為大柴胡湯也、

【訓読】
大柴胡湯方
柴胡半斤 黄芩三両 芍薬二両 半夏半斤 生薑五両 枳実四枚 大棗十二枚
右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎し、一升を温服す。日に三服す。一方は大黄二両を用ふ、若し大黄加はらざれば、恐らくは大柴胡湯と為さざるなり。

 

第百九章

傷寒、十三日不解、胸脇満而嘔、日哺所発潮熱、已而微利、此本柴胡証、〔下之〕而不得利、今反利者、知医以丸薬下之、此非其治也、潮熱者、実也、先宜小柴胡湯以解外、後以柴胡加芒消湯主之、

傷寒、十三日不解、胸脇満而嘔、日哺所発潮熱、已而微利、此本柴胡証、而不得利、今反利者、知医以丸薬下之、非其治也、潮熱者、実也、先宜小柴胡湯以解外、後以柴胡加芒消湯主之、

【訓読】
傷寒、十三日解せず、胸脇満して嘔し、日哺所(じっぽしょ)潮熱を発し、已(すで)にして微利す。此本柴胡の証にして、利するを得ず、今反って利するは、知る医丸薬を以て之を下せるを。其の治に非ざるなり。潮熱は、実なり。先づ宜しく小柴胡湯にて以て外を解すべく、後柴胡加芒消湯を以て之を主る。

柴胡加芒消湯方

小柴胡湯方内加芒消六両、

大柴胡湯方内加芒消六両、余依前法、服不解更服、

【訓読】
柴胡加芒消湯方
大柴胡湯方内に芒消六両を加ふ。余は前法に依る。服して解せざれば更に服す。

第百十章

傷寒、十三日不解、過経譫語者、以有熱也、当以湯下之、若小便利者、大便当鞕、而反下利、脈調和者、知医以丸薬下之、非其治也、若自下利者、脈当微厥、今反和者、此為内実也、調胃承気湯主之、

【訓読】
傷寒、十三日解せず、過経譫語する者、熱有るを以てなり、当に湯を以て之を下すべし。若し小便利する者は、大便当に鞕かるべし、而るに反って下利し、脈調和する者、知る医丸薬を以て之を下せるを、其の治に非るなり。若し自下利する者は、脈当に微にして厥すべし、今反って和する者は、此れ内実と為すなり、調胃承気湯之を主る。

●第十五節…第百十一章、第百十二章

第百十一章

太陽病、不解、熱結膀胱、其人如狂、血自下、〔下者愈〕、其外不解者、尚未可攻、当先解外、外解已、但少腹急結者、乃可攻之、宜桃核承気湯〔方〕、

太陽病、不解、熱結膀胱、其人如狂、血自下、其外不解者、尚未可攻、当先解外、外解已、但少腹急結者、乃可攻之、宜桃核承気湯、

【訓読】
太陽病、解せず、熱膀胱に結ぼれ、其人狂の如く、血自づから下る、下る者は愈ゆ。其の外解せざる者は、尚未だ攻むべからず、当に先づ外解すべし。外解し已って、但少腹急結する者は、乃ち之を攻むべし、桃核承気湯に宜し。

桃核承気湯方
桃仁五十個 桂枝二両 大黄四両 芒消二両 甘草二両
右五味、以水七升、煮取二升半、去滓、内芒消、更上火、微沸、下火、先食服五合、日三服、当微利、

【訓読】
桃核承気湯方
桃仁五十個 桂枝二両 大黄四両 芒消二両 甘草二両
右五味、水七升を以て、煮て二升半を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上せて、微沸し、火を下し、食に先だちて五合を服す、日に三服す。当に微利すべし。

第百十二章

傷寒、八九日、下之、胸満煩驚、小便不利、譫語、一身尽重、不可転側者、柴胡加龍骨牡蠣湯主之、

【訓読】
傷寒、八九日、之を下し、胸満煩驚し、小便不利、譫語し、一身尽く重く、転側すべからざる者は、柴胡加龍骨牡蠣湯之を主る。

柴胡加龍骨牡蠣湯方

半夏二合 大棗六枚 柴胡四両 生薑一両半 人参一両半 龍骨一両半 鉛丹一両半 桂枝一両半 茯苓一両半 牡蠣一両半 大黄三両

柴胡四両 龍骨一両半 黄芩一両半 生薑一両半 鉛丹一両半 人参一両半 桂枝一両半 茯苓一両半 半夏二合半 大黄二両 牡蠣一両半 大棗六枚
右十二味、以水八升、煮取四升、内大黄切如碁子大、更煮一二沸、去滓、一升温服、

【訓読】
柴胡加龍骨牡蠣湯方
柴胡四両 龍骨一両半 黄芩一両半 生薑一両半 鉛丹一両半 人参一両半 桂枝一両半 茯苓一両半 半夏二合半 大黄二両 牡蠣一両半  大棗六枚
右十二味、水八升を以て、煮て四升を取り、大黄切ること碁子大の如きを内れ、更に煮ること一二沸、滓を去り、一升を温服す。

以下の四章(第百十三章、第百十四章、第百十五章、第百十六章)は疑ふらくは、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第百十三章

傷寒、腹満、譫語、寸口脈、浮而緊、此肝乗脾也、名曰縦、刺期門、

第百十四章

傷寒発熱、嗇嗇悪寒、大渇、欲飲水、其腹必満、自汗出、小便利、其病欲解、此肝乗肺也、名曰横、刺期門、

第百十五章

太陽病、二日、反躁、反熨其背、而大汗出、大熱入胃、胃中水竭、躁煩、必発譫語、十余日、振慄、自下利者、此為欲解也、故其汗、従腰以下不得汗、欲小便不得、反嘔、欲失溲、足下悪風、大便鞕、小便当数、而反不数、及不多、大便已、頭卓然而痛、其人足心必熱、穀気下流故也、

第百十六章

太陽病、中風、以火劫発汗、邪風被火熱、血気流溢、失其常度、両陽相薫灼、其身発黄、陽盛則欲衄、陰虚則小便難。陰陽倶虚竭、身体則枯燥、但頭汗出、剤頸而還、腹満、微喘、口乾、咽爛、或不大便、久則譫語、甚者至噦、手足躁擾、捻衣摸牀、小便利者、其人可治、

●第十六節…第百十七章、第百二十四章、第百二十五章

第百十七章

傷寒、脈浮、医以火迫劫之、亡陽、必驚狂、起臥不安者、桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯主之、

【訓読】
傷寒、脈浮、医火を以て之を迫劫(はくきょう)して、亡陽し、必ず驚狂し、起臥安からざる者は、桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯之を主る。

桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣湯方
桂枝三両 甘草二両 生薑三両 牡蠣五両 龍骨四両 大棗十二枚 蜀漆三両
右七味
(※)、以水一斗二升、先煮蜀漆、減二升、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、

【訓読】
桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣湯方
桂枝三両 甘草二両 生薑三両 牡蠣五両 龍骨四両 大棗十二枚 蜀漆三両
右七味、水一斗二升を以て、先づ蜀漆を煮、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。

以下の六章(第百十八章、第百十九章、第百二十章、第百二十一章、第百二十二章、第百二十三章)は疑ふらくは、旧章に非ざらん。

第百十八章

形作傷寒、其脉不弦緊而弱、弱者必渇、被火者、必譫語、弱者発熱、脉浮、解之、当汗出愈、

第百十九章

太陽病、以火薫之、不得汗、其人必躁、到経不解、必清血、名為火邪、

第百二十章

脉浮、熱甚、反灸之、此為実、実以虚治、因火而動、必咽燥唾血、

第百二十一章

微数之脈、慎不可灸、因火為邪、則為煩逆、追虚逐実、血散脈中、火気雖微、内攻有力、焦骨傷筋、血難復也、

第百二十二章

脈浮、宜以汗解、用火灸之、邪無従出、因火而盛、病従腰以下、必重而痺、名火逆也、

第百二十三章

欲自解者、必当先煩、乃有汗而解、何以知之、脈浮、故知汗出解也、

第百二十四章

焼針令其汗、針処被寒、核起而赤者、必発奔豚、〔気従少腹上衝心者、灸其核上、各一壮〕、与桂枝加桂湯、〔更加桂二両〕、

焼針令其汗、針処被寒、核起而赤者、必発奔豚、与桂枝加桂湯、

【訓読】
焼針し、其れをして汗せしめ、針処寒を被むり、核起って赤き者、必ず奔豚を発す。桂枝加桂湯を与ふ。

第百二十五章

火逆、下之、因焼針煩躁者、桂枝甘草龍骨牡蠣湯主之、

【訓読】
火逆し、之を下し、焼針に因て煩躁する者は、桂枝甘草龍骨牡蠣湯之を主る。

桂枝甘草龍骨牡蠣湯方
桂枝一両、甘草二両、牡蠣二両、龍骨二両、
右四味
(※)、以水五升、煮取二升半、去滓、温服八合、日三服、

【訓読】
桂枝甘草龍骨牡蠣湯方
桂枝一両 甘草二両 牡蠣二両 龍骨二両
右四味、水五升を以て、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す。日に三服す。

以下の四章(第百二十六章、第百二十七章、第百二十八章、第百二十九章)は疑ふらくは、旧章に非ざらん。…『傷寒論講義』

第百二十六章

太陽傷寒者、加温針、必驚也、

第百二十七章

太陽病、当悪寒発熱、今自汗出、不悪寒発熱、関上脉細数者、以医吐之所到也、一二日吐之者、腹中饑、口不能食、三四日吐之者、不喜糜粥、欲食冷食、朝食暮吐、以医吐之所致也、此為小逆、

第百二十八章

太陽病、吐之、但太陽病、当悪寒、今反不悪寒、不欲近衣、此為吐之内煩也、

第百二十九章

病人脉数、数為熱、当消穀引食、而反吐者、此以発汗、令陽気微、膈気虚、脉乃数也、数為客熱、不能消穀、以胃中虚冷、故吐也、

●第十七節…第百三十章

第百三十章

太陽病、過経十余日、心下温温欲吐、而胸中痛、大便反溏、腹微満、鬱鬱微煩、先此時、自極吐下者、与調胃承気湯、〔若不爾者、不可与、但欲嘔、胸中痛、微溏者、此非柴胡証、以嘔、故知極吐下也〕、

太陽病、過経十余日、心下温温欲吐、而胸中痛、大便反溏、腹微満、鬱鬱微煩、先此時、自極吐下者、与調胃承気湯、

【訓読】
太陽病、過経十余日、心下温温として吐せんと欲して、胸中痛み、大便反って溏(とう)し、腹微満し、鬱鬱として微煩す。先づ此の時、自づから吐下を極むる者は、調胃承気湯を与ふ。

●第十八節…第百三十一章、第百三十二章、第百三十三章

第百三十一章

太陽病、六七日、表証仍在(※)、脈微而沈、反不結胸、其人発狂者、以熱在下焦、少腹当鞕満、小便自利者、下血乃愈、〔所以然者、以太陽随経、瘀熱在裏故也〕、抵当湯主之、

太陽病、六七日、表証仍在、其外不解者、尚未可攻、当先解外、外解已、脈微而沈、反不結胸、其人発狂者、以熱在下焦、少腹当鞕満、小便自利者、下血乃愈、抵当湯主之、

【訓読】
太陽病、六七日、表証仍ほ在り、其の外解せざる者は、尚未だ攻むべからず、当に先づ外解すべし。外解し已って、脈微にして沈、反って結胸せず、其の人狂を発する者は、熱下焦に在るを以て、少腹当に鞕満すべし。小便自利する者は、血を下せば乃ち愈ゆ。抵当湯之を主る。

抵当湯方
水蛭三十個、虻虫三十個、桃仁二十個、大黄三両、
右四味、以水五升、煮取三升、去滓、温服一升、不下再服、

【訓読】
抵当湯方
水蛭三十個 虻虫三十個 桃仁二十個 大黄三両
右四味、水五升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。下らざれば再服す。

第百三十二章

太陽病、身黄、脈沈結、少腹鞕、小便不利者、為無血也、小便自利、其人如狂者、血証諦也、抵当湯主之、

【訓読】
太陽病、身黄に、脈沈結し、少腹鞕く、小便不利の者は、血無しと為すなり。小便自利し、其の人狂の如き者は、血証諦(あきらか)なり。抵当湯之を主る。

第百三十三章

傷寒有熱、少腹満、応小便不利、今反利者、為有血也、当下之〔不可余薬〕宜抵当丸、

傷寒有熱、少腹満、応小便不利、今反利者、為有血也、当下之、宜抵当丸、

【訓読】
傷寒熱有り、少腹満すれば、応に小便不利なるべし。今反って利する者、血(けつ)有りと為すなり、当に之を下すべし、抵当丸に宜し。

抵当丸方
水蛭二十個、虻虫二十五個、桃仁二十個、大黄三両
右四味、杵、分為四丸、以水一升、煮一丸、取七合、服之、晬時当下血、若不下者、更服、

【訓読】
抵当丸方
水蛭二十個 虻虫二十五個 桃仁二十個 大黄三両
右四味、杵き、分ちて四丸と為し、水一升を以て、一丸を煮、七合を取り、之を服す。晬時(さいじ)当に血を下すべし。若し下らざれる者は更に服す。

以下の章(第百三十四章)、恐らくは本文に非ざらん。

第百三十四章

太陽病、小便利者(※)、以飲水多、必心下悸、小便少者、必苦裏急也、

※「小便利者」は、『諸病源候論』「小便不利者」に作る。

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