少陰病

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真の陰病のはじまり

傷寒論では、本格的な陰病はこの少陰病から始まります。

〈傷寒論〉少陰病篇第282章
少陰の病為る、脈微細にして、但寐(いね)んと欲す

少陰病(しょういんびょう)の症候は循環静黙の状があります。寒邪の病勢はますます進んでいるのに、気力体力が落ち込んでいるため、脈力も弱くなり、手足冷たく、あるいは寒がって、患者はただただゴロゴロと寐ていたいと訴えます。
条文にいう「但寐んと欲するなり」がそれで、この「但」は術者の側から見た視点を意識しています。臨床にあっては、術者はこれを患者の様子から望診で察知する感性が要求されます。「寐」は眠るの意ではなく、横になって寝ていたいというもので、意識のぼんやりした混迷(stupor)も含まれます。「脈微細」とは微弱細少の意で、内外虚寒の候を見せており、心臓血管機能の衰弱した徴です。したがって少陰病の病態は「困すと雖も苦しむ所無し」といい、一見軽そうに見えて、実は重いというのが少陰病の特徴であります。

少陰病の病む部位は、裏すなわち消化管辺りに属し、寒が支配しますので、症候としては完穀下痢(食べたものがそのまま排出される)や身体疼重、あるいは腹痛などとなって現れます。
ところで傷寒論では、六病位の提綱の条文の中で脈について触れているのは太陽病と少陰病です。これは病の初発において、いきなり少陰病から始まることがあるためで、これを直中少陰(直ちに少陰に中る)といいます。少陰病は太陽病と項背を介して陰病と陽病の関係にあります。「頭項強ばり痛む」を訴えながら陰病に陥ると少陰病となり、少陰病においては、一部に太陽病位と同じ表位の病変を呈するものがあり、これを表証を挿むといいます。脱汗による四肢微急で用いる桂枝加附子湯、咽痛の風邪で用いる麻黄附子細辛湯、麻黄附子甘草湯などです。また少陰病では虚熱による真寒仮熱を呈することがありますが、このときは太陽病と見間違えるような表熱裏寒で現ることがあります。真武湯に見られる虚熱のすりかわり現象です。

これらの薬方は大熱薬の附子を含み、体を温めて陽気を救い新陳代謝の機能を高めます。当然のこと無理は禁物であり、体を温かく保ち、安静にすることで徐々に病勢の挽回を計ります。臨床ではこの辺の養生の説明は大変重要です。後世方でこのような少陰病や次の厥陰病に属する薬方は少ないようです。

少陰病に属する主な薬方
麻黄附子細辛湯 桂姜棗草黄辛附湯 桂枝加附子湯 桂枝加朮附湯 真武湯 四逆湯 四逆加人参湯

〔画像/太陰病の図〕

 
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