陽明病

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陽病が極まるところ

陽明病(ようめいびょう)は陽病の極で、体力と病毒が伯仲するところです。太陽病や少陽病から伝わった病は、ここで極まります。「明」は明顕の明で、また備わるとの意もあります。

〈傷寒論〉陽明病篇第187章
陽明の病たる、胃家実するなり。

非常に簡潔な表現ですが名文です。文中「胃家実するなり」とあるように陽明病は実証のみで虚証はありません陰陽虚実のものさしの図参照)。ここでいう胃とは現代医学でいう胃でのことではなく、胃腸を指しており、病邪と消化管内容物とが結びつき充満します。したがって太陽、少陽、陽明の三陽において病巣は最も深層に宿り、下の図のとおり「裏」を以て陽明病の病位とします。胃家実するとどうなるかといえば、臨床では自他覚的に強い腹満が生じ、甚だしい便秘を伴います。

陽明病の急性症での熱候は、太陽、少陽以上に邪熱が充実しており、体温はこれ以上は上げられないという極限までセットされます。身熱(しんねつ)、悪熱(おねつ)、潮熱(ちょうねつ)といい、40度くらいの高熱が1〜2週間持続する稽留熱であります。病者は熱がり、熱臭のある汗が沸々と出て、いささかも悪寒はなく、反対に熱を悪むようになり、高熱によりうわ言(譫語)をいうようになります。腹候は膨満し苦しい腹満であり便秘となりますが、甚だしい場合は高熱のため体内の食物、水分が乾燥して腸内に結実し、ポロポロに乾燥した糞塊である燥屎(そうし)となります。腸チフスや肺炎の重症時に見られる症候であります。

陽明病の治法は攻下で、瀉下作用の強い下剤を用いて、消化管内容物と結びついた病毒を排除する方法がとられます。その時植物性生薬である大黄(だいおう)で力及ばぬ場合には、鉱物生薬である芒消(ぼうしょう)の出番となります。陽明病の病の軽重は糞便の状況によって明らかになります。不大便、大便難、大便鞕、燥屎の順に深くなります。 傷寒論では大黄、芒消の下剤の使い方は慎重でありまして、先の太陽病、少陽病の薬方証が残っているなら、そちらの治療を先に行うよう事あるごとに説いています(先表後裏の法)。また完全に陽明病の証であって、下剤を使う場合であっても、下しすぎてはいけないとあり、誤って下しすぎると、病位は陽病から一気に陰病へと転じてしまいます。急性熱性疾患においては、下剤の使い方はとても難しいのであります。
急性の熱病以外では、陽明病の薬方は腹満、便秘などを目標に使用します。このときは虚証でないことが重要で、脈に力あり、腹力が充実していることを確認します。実証瘀血を治す本命の桃核承気湯や大黄牡丹皮湯などはこれに準じて使用されています。

その他陽明病に近い症候として、裏熱あって煩渇する白虎湯類が存在します。これらは大便の秘結がないため、純然たる陽明病証とはいえないのですが、裏熱旺盛で全身に熱情あり、陽明病の一部として考えていきます。白虎湯類の脈は浮滑あるいは洪大で力があります。

陽明病に属する主な薬方
大承気湯 小承気湯 調胃承気湯 桃核承気湯 大黄牡丹皮湯 白虎湯 白虎加人参湯 白虎加桂枝湯 猪苓湯

〔画像/陽明病の図〕

 
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