少陽病

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陽病にて病が淀むところ

少陽病(しょうようびょう)は、急性熱病の初発、太陽病から始まった病が治らずにくすぶったまま、次のステージへと進んだ状態です。「少」とは「微少」の意味ですが、かたや「少壮」(血気ざかり、若くて元気一杯なこと)の意味もあります。

〈傷寒論〉少陽病篇第272章
少陽の病為る、口苦く、咽(のんど)乾き、目眩(くる)めくなり。

少陽病の病位について理解する場合には、少陽病の真正面の証である小柴胡湯の以下の条文(少陽正対の証)も合わせて見ていきます。

〈傷寒論〉太陽病中篇第99章
傷寒五六日中風、往来寒熱し、胸脇苦満し、黙黙として飲食を欲せず、心煩し、喜嘔す。小柴胡湯之を主る。

少陽病は図のとおり太陽病の表証より内部に進行した状態ですが、次の陽明病のように消化管の完全なる裏証までにはいたっていません。そのため少陽病の範囲は表裏間又は半表半裏となります(流派により表現が異なる)。少陽病では太陽病の表証のような目立った症状が少ないため、一見病状は軽くなった印象を持ちますが、病状としては太陽病より、むしろ進行しています。
また少陽病は、太陽病と同様に虚実(脈と腹力の充実具合で判断)がありますが、少陽病の虚実は幅があり、虚証は太陽病の表証に似た性質(表的少陽)を帯び、実証は陽明病の裏証に似た性質(裏的少陽)を帯びます。そのため、少陽病に属する薬方は多岐に渡ります。少陽病は病が淀む場所であり、守備範囲は広いのが特徴です。

少陽病の症候は、胸や脇、あるいは横隔膜といった辺りの内臓に、重苦しい感じ(胸脇苦満)が出てきます。当然胃もその辺りに含まれますから、食欲不振や口渇、嘔気、嘔吐が現れます。口の中に苦みを覚えたり、舌に白い苔みたいなもの(白苔)ができたりするのもこのためです。
また少陽病の熱候は、太陽病の悪寒発熱のように体温がグッグッと上がっていくのではなく、悪寒と発熱がある程度間隔をおいて、しかも熱が一定のところまでしか上がらない往来寒熱(弛張熱)に変わります。朝方は平熱だったが、午後になって微熱を覚えるような状態がそれです。微熱であっても、病が長びいているので体力は消耗していきます。

風邪などで薬を飲んで、ある程度症状は治ったが、どうも今一つ抜けきらないといって、相談にこられる方がいらっしゃいます。様子を伺うとこれらの症状が揃っています。そこで適応する柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)や柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などの漢方薬をお渡しすると、「煎じ薬を飲まされるとは思わなかったが、飲んだらスッキリしたよ」と喜んでもらうことが時々あります。

  この他少陽病では、感覚器官の異常(めまい、耳鳴り)や精神的な症状(不安感、胸さわぎ)も現れます。少陽病は守備範囲が広いため、慢性疾患においては、太陽病よりもこの少陽病の薬方を使うことの方が多く、漢方薬がジワジワと効いていく印象をもたれるのは、少陽病の症候と治法(和解)に理由があるのです。

少陽病に属する主な薬方
小柴胡湯 柴胡桂枝湯 柴胡桂枝乾姜湯 柴胡加龍骨牡蠣湯 大柴胡湯 麻杏甘石湯 越婢加朮湯 五苓散 苓桂朮甘湯 半夏瀉心湯 半夏厚朴湯 黄芩湯 黄連解毒湯

 

〔画像/少陽病の図〕

 
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