虚実

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漢方のものさし…その2

虚実(きょじつ)は古方漢方を学ぶ者にとって、最初の難関であります。傷寒論において病の進行状況と、体力と病毒の力関係を示すものさしが陰陽だとすると、虚実は体力と病邪の闘いの様相を現すものさしで、病の質を決めます。具体的には次のように理解します。

実証…病邪が生体内で充満している状態。「実」とは内容充実の意
虚証…病者の体力、気力が虚弱な状態。「虚」とは内容空虚の意

「実」は内容充実の意で、実証とは病邪が生体内で充満している状態をいいます。同時にそれに立ち向かう体力も充実して真っ向からぶつかりあおうとします。したがって闘病反応は激しいことが多いのが特徴です。
「虚」は内容空虚の意で、虚証とは病者の体力、気力が虚弱な状態をいいます。対する病邪は陽病においては散漫ですが、陰病においては益々増進します。いずれも闘病反応は静かなことが多いのが特徴です。
傷寒論ではこの虚実の本質を正確に理解していないと、その後の証の理解が困難で、先哲の治験例も何故その処方を使ったのかが分からなくなります。

初学者の方からはよく実証と虚証の定義において主語が異なるのは何故かという質問を受けます。これは虚証において陽病と陰病で闘病の様相が異なるためで、勝ち戦の陽病では病者の虚実はそのまま当人の気力体力と比例し、邪毒が充実していれば、気力体力も充実し、邪毒が空虚であれば病者の気力体力も散漫であります。それに比べ負け戦の陰病ではその病勢に反比例するように病が進行するにつれて立ち向かう気力体力は失われていきます。この二つの闘病の様相の違いを説明しようとすると上記のような説明となります。

そしてここで最も重要なのが、虚実に似て非なるものに強弱があるということです。強とは平素体力強壮なる者を指し、弱とは稟性薄弱なるものをいいます。あの人はガッチリしているとか、この人は華奢だとかいうのは強弱について述べています。虚実はあくまで病気の状態での様子を現し、強弱は平時の体格を現します。この区別がついていないと臨床で思わぬ勘違いをします。本当のことをいえば、これは頭で理解しただけでは無理で、症例を積み重ねて虚実と強弱の違いを実感して身についていくもので、その人のその後の漢方の感性的認識を左右します。それくらい重要な部分ですが、ともかく虚実と強弱は違うということ、是非覚えておいて下さい。

傷寒論は先の陰陽と虚実でもって病気の進行状況を三陰三陽の六つの段階(stage)で現します。これを六病位といいます。傷寒論では、このように陰陽虚実を疾病の進行状況とそれに対する治療を決めるための一種のものさしとして用いるのであり、これで何らかの病因を探っているのでもなければ病論を述べているわけでもありません。傷寒論を規範として漢方薬を用いるのであれば、まず先ず病の病位を定めるところから始まります。現在その病が三陰三陽の何れの病位にあるのかが把握できれば、治療の進路がほぼ決まります。各病位の特徴とそれに属する薬方についてはまた後で詳しく説明します。

〔画像/陰陽虚実のものさし〕


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