陰陽

HOME > 漢方資料 > 漢方略解20

漢方的ものさし…その1

病の本態を漢方的に判断するときの規範は「証」ですが、その証を突き詰めていくと二つに分類することができます。それが陰陽(いんよう)です。漢方では全ての病は、陰陽の何れかに分類できます。特に傷寒論での陰陽は病の進行状況と、体力と病毒の力関係を示すものさしとなります。

傷寒論では、陰陽は病の進行状況である病位(stage)を現します。健常人において元から陰陽があるわけではなく、病に罹ったときに、その病が今現在、どのくらいの時期にあるのかを判断するための標識として使います。どの病位にあるかを知ることで、治療方法が決まります。これは人の生命現象を相対的な陰陽に分けて、その量的関係(バランス関係)の対比で病因を探ろうとする黄帝内経の陰陽論の考えとは異なります。具体的にいうと次のようになります。

陽病…発揚性、陽熱性で経過中必ず熱感を覚えるもの。「陽」とは積極性の意
陰病…沈衰性、陰冷性で経過中必ず寒気を覚えるもの。「陰」とは消極性の意

病の病情が発動的で、身体上部へ向かう勢いがある時期が陽病であり、そこで現れる薬方証は陽証といいます。逆に病情は沈滞気味で、身体下部へと降りていく様を呈する時期は陰病で、その薬方証は陰証といいます。よくあの人は陽気な人だとか、陰気な人だとかいいますが、その「陽気」「陰気」という言葉にこめた意味と、ここでの定義に近いものを感じると思います。

通常病は、陽病から始まり、段々とその性質を変化させ、治癒できなければ次第に陰病へと移行します。つまり病位を探るときに陽病だと判断したときは勝ち戦であり、陰病だと判断したときは負け戦の状態だということも同時に頭に入れておかなければなりません。ここで先に申しましたとおり、陰病というのは沈滞下降の様子を呈する時期ですから、症状が重篤にも関わらず、傍目には軽く見えるときがあります。先哲はこれを「困すと雖も苦しむところなし」と表現しています。

これは大変重要な認識で、訴えが少ないから症状が軽いとは限らないのです。本当に重篤な段階では訴える元気もないのです。ところが陽病の勢いが残像として残っていたりすると、陰病に気付かなかったり、見落としたりすることがあるのです。ここでは病者のちょっとした仕草や醸し出す様子から、察知する能力が必要で知識だけでなく経験と感性も要求されます。


Copyright© 2006-2015 KENICHI TSUKADA All reserved.

Valid HTML 4.01 Strict Valid HTML 4.01 Strict