金匱要略

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〔画像/『金匱要略』〕

傷寒論の姉妹書

金匱要略(きんきようりゃく)は傷寒論の姉妹書と言われ、漢方を語るうえでやはり無くてはならない書です。

元々傷寒論と対で傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)という名であったと云われ、その内容は傷寒論は急性症について、金匱要略は慢性病について述べたものと云われています。
しかし古方派の中には、その内容を比較するにこの二書は全く別の本ではないかと考える先哲が少なくありません。

薬方書として見た場合、金匱要略は傷寒論と双璧をなします。傷寒論に負けず劣らず、綺羅星の如く名処方が現れます。夜間尿など腎虚で使う八味丸(はちみがん)や婦人病などの血の道で使われる駆瘀血薬の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、膝関節痛などで使われる防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)や越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)など、金匱要略のみに出てくる薬方も少なくありません。

ところが疾病治療の指南書として見た場合、傷寒論と金匱要略とでは、発想がまるで違います。金匱要略は当時の中国(後漢)の哲学思想の基本である五行説(ごぎょうせつ)の影響を強く受けています。金匱要略を五行説抜きに読むと、半分以下しか理解できないくらいです。
五行説とは、万物の様々な現象を木火土金水(もっかどこんすい)の五つに配置し、相生(そうせい)、相剋(そうこく)などの考えを駆使して、その病因の相対関係を明らかにしようとする思想で、金匱要略に限らず中国の古医書は皆この五行説の影響下で書かれています。

傷寒論はそうした中で唯一その五行説を全く介在しない、唯目前の症候と治法(薬方)の事実のみを正確に列挙した極めて科学的視点で書かれた書であり、そのあまりに正確にして緻密な記述なる故に、行間に潜む疾病治療に対する法則性までをも導き出すことができるという類い希なる書であります。先哲がこの二書は別なものとする根拠の一つはここにあります。私自身も傷寒論を勉強すればするほど、この二書は別書であるという感慨を強くしています。

しかしそれでも金匱要略は漢方の古典として重要な書であることは誰もが認めるところであります。何故ならこの二書に出てくる薬方の運用を手中に修めれば、漢方での薬物療法はほぼ網羅できると言っても過言ではないからです。金匱要略が傷寒論とともに聖典であることに変わりはありません。


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