煎じ薬とエキス製剤

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効き目をとるか、便利さをとるか

漢方薬は大半が煎じ薬で、原料となる草根木皮(そうこんもくひ)の生薬を土瓶でもって、一定の水量で煎じつめ、そのスープを飲むのが正式です。映画やテレビドラマの時代劇に出てくるシーンもそのように描いています。エキス製剤とはその煎じつめたスープを凍結乾燥させたもので、剤型的にはインスタント物と同類です。コーヒー通はインスタントコーヒーを出す喫茶店には行かないでしょうし、食通は料亭でインスタントの吸い物などが出されたら、怒って帰ってしまうかもしれません。漢方薬とて同じこと、こだわりは大切です。

漢方を勉強していると、勉強している者同士でお互いの考えを話しあうことがあります。私はそういう時には煎じ薬を使っているという前提で話しを進めていきます。煎じ薬を使われていない先生には、使うよう説得します。エキス製剤の効果は煎じ薬と同等だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私自身の経験ではそうは思えません。煎じ薬と比べて、薬方の効き方に手応えの差を感じることがあり、特に病情が時々刻々と変化していく病においては、エキス製剤だけに頼っていては、効果が弱かった場合事前の予測と結果に乖離が生じてしまい、治療が後手に回ってどんどんこじらせてしまうことがあります。

傷寒論では桂枝湯を例にとりそのことを戒めています。
「太陽病、初め桂枝湯を服し、反って煩して解せざるは、却って桂枝湯を与ふれば則ち愈ゆ」(第24章)
病が当然解すべくして解せずに煩悶するのは、薬力が足りていないからで、前に却(還)って同じ薬方を続けて与えれば治ると述べています。これは投じた薬方の薬力不及による「持続の法」を説いています。病勢の激しい病では煎じ薬でさえそういう場合があるのです。またエキス製剤の製品は需要がない処方は淘汰されていきますので、滅多に使わないが重要な薬方は煎じ薬で作らなければなりません。いざというときに煎じ薬を作れる体制を取っておくことは、漢方を真摯に取り組む者の礼儀です。

誤解の無いように言っておきますが、だからといってエキス製剤が全く必要ないというのではありません。私は煎じ薬を主体としながら、エキス製剤を方便として使いわけています。やはりエキス製剤ならではの簡便さは魅力です。私は先ず煎じ薬を使って効果を確認した後であるならば、エキス製剤を使っても良いと考えています。そうすれば煎じ薬との手応えの違いは、それを飲まれる方が判断できるからです。漢方薬にはエキス製剤になりやすいものとそうでないものがあります。また生薬のところでも話しましたが、原料生薬の品質の差によっても効果に差が出ることがあります。同じ処方のエキス製剤でも、メーカーにより効果の差を感じることがあるということです。その場合でも煎じ薬での効果が分かっていれば、それを基準に臨床での有用性は判断できます。常に効果の有無を確認しながら、使い分けてください。


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