生薬2

HOME > 漢方資料 > 漢方略解 4

〔画像/生薬市場〕

選品について

漢方薬に使われる原料の生薬は、料理で言えば食材にあたります。一流の料理人は食材選びから料理が始まることはよく知られていますし、料理を食べる方もそのことはよく知っています。とすれば我々漢方に携わる者は、最高の漢方薬をお渡しするためには、その原料である生薬から吟味していかなければならないことは当然のことであります。温成治病十五訓の中で「生薬は充分吟味すべきこと」と述べている理由はそこにあります。

生薬の選品は、成分分析技術が進んできましたので、昔のように偽物を掴まされるようなことはほとんどなくなりました。しかし極上の品となるとそうはいきません。未だに昔ながらの五感に頼るしか方法はないのです。しかも原料を卸す問屋の方も、こちらに見る目がないとわかれば、こっそりと品質を落としてくることもありますので、我々も常ににらみを利かせておく必要はあります(半分冗談です)。

たとえば、漢方で最も基本となる桂枝湯(けいしとう)という薬方があります。この桂枝湯の加味方には大変有益な薬方が多く、有名な葛根湯(かっこんとう)なども桂枝湯から派生して生まれた薬方の一つです。この桂枝湯の君薬(くんやく)、つまりその薬方の効き目を最も左右する主薬は名前のとおり桂枝で、これは元々は肉桂(にっけい)の枝を指しますが、現在では木の樹皮を桂皮(けいひ)と称して用います。この桂皮はシナモンとして食品でよく使われますが、漢方薬として使うためには、製油成分をたっぷり含み、噛んで舌をピリッと刺戟する辛さを有するものでなければなりません。価格は3〜4倍違います。

また肌表(きひょう)の水をさばいて、汗の異常や浮腫をとる黄耆(おうぎ)という生薬があります。この黄耆が配合された漢方薬、たとえば桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)や防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)などは、黄耆が君薬(くんやく)、つまりその薬方の効き目を最も左右する主薬となり、黄耆の良し悪しがその薬方の効き目を左右します。これが一定の規格をクリアしただけではとても物足りなく、価格も2倍近くになりますが、しなやかで香りの高い黄耆を求めなければ、上記の薬方の効果は望むべくもないでしょう。

私自身長年の漢方経験の中で思うことは、この上級の生薬の品質が年々落ちてきているということです。私どもの仕事は、この漢方薬の本来持っている力、薬能(やくのう)を充分に発揮させることです。そのために常にその時点で良質の生薬を自らの眼で選んで使用する義務があるのです。


Copyright© 2006-2015 KENICHI TSUKADA All reserved.

Valid HTML 4.01 Strict Valid HTML 4.01 Strict