生薬

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〔画像/生薬を入れる百味箪笥〕

漢方の原料

漢方では薬として有用な植物を、薬効を得るために加工しますが、その加工を修治(しゅうちorしゅち)といい、修治されたものを生薬(しょうやく)といいます。昔は「きぐすり」という呼び名でしたが、現在は「しょうやく」と読み、大学では漢方薬の原料だけでなく、決明子(けいつめいし)やセンブリといった局方品となっている有用な民間薬やベラドンナやロート根、セネガやセンナといった西洋薬の原料となるものも含めて生薬学という薬学教育の中で学びます。私達が漢方薬を作るときの材料は、すべてこの生薬として加工されたものを使います。

たとえば春に白い花を咲かせるコブシは、その開花する前の蕾を採取し、乾燥させたものが生薬の辛夷(しんい)で、副鼻腔炎などで葛根湯(かっこんとう)に加味したり、咳嗽で用いる辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)に配合されたりします。葛根湯の最も重要な生薬、つまり君薬である葛根は、クズの根を掘り起こし、板状またはサイコロ状に切って乾燥させたものです。そしてこの根から取り出したデンプンがくず湯に使われる「くず粉」で、こちらは薬には使用できません。昔関西のとある生薬問屋から「吉野葛の良いのが入りますがどうですか?」といわれ、注文したことがありました。すると届けられたのは、そら豆大の葛粉の固まりで当然ながら生薬の葛根としては使い物になりませんでした。問屋が勘違いをしたのか、それとも葛根と葛粉の違いを知らなかったのか、それっきりだったので未だに謎です。

薬用植物は、同じ基原植物でも用いる部位によって効能が異なることがあります。たとえば果物の桃は、民間薬としては葉を桃葉(とうよう)と称して浴剤にしてあせもなどに使いますが、漢方薬としては果肉を食べた後に残った固い殻を割り、その中から出てきたアーモンド状の種を桃仁(とうにん)と称して、打撲や女性の更年期障害などの「血の道」といった瘀血に関わる漢方薬に使います。また 秋に赤い実をつける「からすうり」の仲間に、黄色の実をつける「きからすうり」というのがあります。この「きからすうり」の実は栝蔞実(かろじつ)といって、水飲の凝結を和らげる働きがあり、胸にひびくような強い咳で使います。「病正に心下に在り」の小陥胸湯で、風邪をこじらせたときの咳で、心窩部を指頭で真下に押すとひどく痛がるときに使うことがあります。ここぞという時に必要な薬方です。一方その根は、昔赤ちゃんのあせもに使う天瓜粉(てんかふん)の原料でした。そして漢方でも栝蔞根(かろこん)といって、津液(しんえき)の不足を補う働きがあり、葛根(かっこん)とは異なる肩こりを治したり、口の乾燥を潤したりする重要な生薬です。精神困乏で用いる柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)は、柴胡剤の汎用処方の一つです。


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